“bungei / 2oo9 / winter”とその周辺

{1}青山七恵×磯崎憲一郎 “これから小説を書く人たちへ”
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309977256

……
7恵(以下[7])「紙に手書きの字が書いてあるだけだとまったく小説っぽく見えないんですよね。ただ自分の書いた文字っていう感じで、これは小説にはならないと思って数ページでやめてしまいました。転機は大学に入学して、パソコンの使い方を教わったことなんです。パソコンだと書けました。」
憲1郎(以下[1])「きっかけは道具が書かせたという感じですかね」
7「ひとつのきっかけでしたね。パソコンだとちょっと書いてプリントして読むと、もう活字じゃないですか。「あ、これはもう、小説っぽくなってる」っていう感激があって、それがどんどん積み重なって、ひとつの作品が書き上がったという感じです。」
(……)
7「だって実際、二、三時間もぶっ続けで書いたりとかってしませんよね。」
1「僕が思うのは、小説家にとっては、小説の時間が実はすべてのほかの時間を内包しているのであって、小説の時間の中を常に生きているから、どこか三〇分とか一時間とかを切り取って小説を書く時間にしたり、小説を読む時間にしたところで、ぜんぜん分断されないというか、もうすでにその中にいるところの時間に過ぎないんですよ。僕たちにとって社会的な生活というのは小説の時間の、小説的生活の中の一部でしかないのかな、と。」

{2}保坂和志文藝賞選評
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309977256

……作者は世界や人間の負の側面を書かなければ小説にならないという間違った小説観をもっていて、律儀にそれを実行したようだ。しかし一八四ページの犬の始末にまつわるくだりに端的にあらわれているように、この作者の視線はやさしい、というかちゃんと見えている。実際に犬を始末する人間はこんなことを考える回路を持っていない。つまり自分以外の人間やまして動物に内面がある、などと考えたこともない。相手が見えるということは、世界と人間に対する肯定の基盤であり、だから主人公もサダも母もサダの母も父もナンバーセブンも、うとましいのに嫌いになれない、どころ好きになってしまう。この距離感は絶妙であると同時にこの作者独自のものだと思う。
いっぽう『ボーダー&レス』は、小説に対する素朴なイメージから書こうとする作品の設計図が事前にあり、『犬』が作者の視線の独自性によって既成の尺度だけでは評価できない、読者の読みに対して能動性を促す作品となっているのに対して、設計図どおりであるがために既成の尺度だけで測られる受動的な作品の域を出ない。
(……)
「やり逃げかよ」という一文は、在日云々よりもずっと、設計図を破るポテンシャルを持っている。

{3}ところで私が中高生であった頃の話。
「国語」が好きで成績もよかったのは、教師の趣味による取り上げられる作品(作家)の偏向のせいもあって、明らかにそこで求められる正答とそれに至る理想的な思考の過程とでも言うべきものがハッキリと見えていたからである。なぜあれほどまでに露骨にフレームワークが示されているのに、それをトレースできない人がいるのか今でも不明だが、そういった教育のデメリットとして、私が小説の醍醐味は作家間(作品間)に示されるフレームワークの違いであることを理解する為には埴谷雄高の洗礼が必要となった。
{4}世界文学全集@NHK
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/mon/index.html
池澤夏樹が最近NHK教育で夜に世界文学全集の番組をやっている。そこでは(フォーマリスティックな言い方になるが)重要な形式の違いというものは、どうしても『サルガッソーの広い海』的な話として展開されるのだ。植民地、民族、文化、制度、マイノリティ……。が、それは実は同一平面上に位置しているのではないか。
とはいっても、何故、私は池澤夏樹を嫌いになれないのか。どうも私が育ってきた環境(というか趣味というか、個人的な好悪)によるものの気がする。
{5}もちろん注意する事
DAS KAPITAL
“The road to hell is paved with good intentions” by Karl MARX
{6}岡崎乾二郎『芸術の設計』
http://www.filmart.co.jp/cat138/001004.php
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1870715
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1870873

{7}走る、もちろんバイクでだが。
燃費が良くなっていく、どんどん。ついに最近は当初のリッターあたりの約160%程度距離が伸びている。これを不審に思うのは何故か。

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